初めは、ビジネスについて何もわかりませんでした。ビジネスのやり方を学ぶためにアメリカへ行き、MIT Enterprise Forum, Pan Arab Region主催のアラブ・スタートアップ・コンペティション(Arab Startup Competition)に参加しました。そこでは、MITの教授や2億円を稼いだ起業家と出会い、「ビジネスってなんて壮大な世界なんだ!」と触発されました。そして、私も「SunBox」を始めたのです。クラウドファンディングで資金調達し、「Green Cake」では9人、「SunBox」では10人を雇いました。そこからビジネスは進んでいきました。
大久保さんは、JYPSが日本の若者たちの緩やかネットワークで、若者の意見がさまざまな政策に反映されることを目的として活動を展開していること、そして、HLPFの場においては、「主要グループとその他のステークホルダー(MGoS)」の中で、子どもと若者の部門であるMajor Group for Children and Youth(MGCY)の中心的なメンバーのひとつとして活動していることについて、いろいろと話してくださいました。
大久保さんによると、最近、JYPSの有力メンバーとして、「Japan National Young Water Professionals(Japan-YWP)」があらたに参加したということでした。Japan-YWPは、International Water Association(IWA)日本国内委員会(IWAの日本支部)の下部組織として、2010年3月5日に設立され、日本水環境学会、日本水道協会などと密接な連携をとりながら、上下水道・水環境に関連する分野の学術的研究・知識の普及・水環境保全への積極的な貢献を目的とした若手中心のプロ集団だそうです。子ども・若者といっても学生ばかりではなく、JYPSは、こうした若い専門家のネットワークも擁しているのです。Japan-YWPの参加もあり、今年のHLPFにおいては、大久保さんがJYPSを代表してSDGsのゴール6(安全な水とトイレを世界中に)に関連するサイドイベントでパネリストの一人を務めたそうです。
このサイドイベントが視野に入れたのは、今月26日に国連総会で開催される、結核に関する初のハイレベル会合です。その会合のテーマは、「結核を終わらせるための連帯:グローバルな感染症への緊急の世界的対応“United to end tuberculosis: an urgent global response to a global epidemic”」。日本の別所大使が共同議長を務め、世界各国の首脳たちが結核対策強強化を目指して政治宣言を採択する予定です。
(“I express my deep solidarity with all the victims of the atomic bomb, their families and Nagasaki community. My message is very clear repeating the cry of the courageous Hibakusha. Nagasaki never again.”)
“Peace is not an abstract concept and it does not come about by chance. Peace is tangible, and it can be built — by hard work, solidarity, compassion and respect.” (平和とは、抽象的な概念ではなく、偶然に実現するものでもありません。平和は人々が日々具体的に感じるものであり、努力と連帯、思いやりや尊敬によって築かれるものです。)ー長崎平和祈念式典でのスピーチより
冒頭のセッションに続いたのは、「ビジネスの力を善のための力として解放する:マルティステークホルダーによるSDGsの実施とビジネスの役割(“Unlocking the power of business as a force for good: Multi-stakeholder implantation of the SDGs and the role of business)」と題するワークショップでした。パネル討論形式で行われ、フィンランド農林・環境大臣のキンモ・ティーリカイネン氏、ラドル(Ladol)のCEO、エイミー・ジェデシミ氏、シュナイダー・エレクトリック・南アメリカゾーン社長のタニア・コセンティーノ氏、ソルベイのCEOジャン・ピエール・クラマデュー氏、国際労働機関(ILO)事務局長のガイ・ライダー氏がパネリストとして参加し、SDGs実施におけるビジネスの役割を活発に議論していました。
18日(水)には、“Business and SDGs ―Insights from Chief Sustainability Officers & sustainable champions”をタイトルに冠したスペシャル・イベントが開催されていました。このイベントは、WBCSD(World Business Council for Sustainable Development:持続可能な開発のための世界経済人会議)と国連経済社会局の共催です。
ハイレベル政治フォーラム(HLPF)の閣僚会合がスタートした16日(月)は午後6時15分から国連総会ロビーで、日本政府代表部が主催した「Designing Future Society for Our Lives; Expo 2025 towards achieving SDGs」と題するレセプションが開催されました。SDGsをメインテーマに掲げた2025大阪・関西万博の招致をPRするためのレセプションです。
岡本政務官は、安倍晋三首相が今年6月のSDG推進本部会合でSDGsを日本の国家戦略の主軸とすることを決意し、政策の強化拡大を示したとして、その3つの柱を説明されました。まず第1に、企業と連携した科学・技術・イノベーションを通じたSDGsを促進し、人間を中心に据えた社会の実現を図り、Society 5.0などによって、経済成長と社会課題の解決の双方を達成することをめざすこと、それと同時に、日本が共同議長を務めたSTIフォーラム(multi-stakeholder forum on science, technology and innovation)での議論を踏まえて、“SDGs for STI”の推進に主導的な役割を果たしていくこと。第2に、日本国内においてSDGsによる地方創生を促進するとともに、そうした地方の努力を世界に向けて伝えていくこと。第3に、SDGsの主要プレイヤーである女性と次世代のエンパワーメントを図るべく、保健や教育の分野での国際協力を強化すること。これらが3本柱で、2025年、大阪に万博を誘致し、その実現を図りたい、と岡本政務官は流暢な英語で述べておられました。2025年という年は、今からおよそ7年後、SDGsの達成期限となる2030年までにあと5年というときです。
まず、ゴール11(住み続けられるまちづくりを)にフォーカスした会議が、17日(火)の午後6時半―8時に開かれました。「アジア太平洋地域における持続可能な都市に向けて("Toward Sustainable Cities in Asia-Pacific")」をタイトルに冠した会議でした。日本政府が国連アジア太平洋経済社会委員会(UNESCAP)、国連大学サステイナビリティ高等研究所(UNU-IAS)、地球環境戦略研究機関(IGS)、慶應大学SFCと共催しました。アジア太平洋地域の都市が直面する課題についての議論です。高橋康夫・環境省地球環境審議官が冒頭挨拶で、諸課題解決のために国を超えたパートナーシップの必要を訴え、慶応大学の蟹江教授が基調講演において、地方での諸行動が国およびグローバルな活動の成否のカギを握るとの旨を強調されていました。続くパネル・ディスカッションでは、国連大学サステイナビリティ高等研究所(UNU-IAS)の竹本和彦所長がモデレーターを務め、そのなかで、内閣府岡本事務局次長が、日本における「地方創生SDGs官民連携プラットフォーム」発足などについて述べられていました。また、北九州市から北橋市長も参加し、同市が過去に公害を克服した歴史などの説明をされました。
ゴール12にフォーカスしたサイドイベントは、18日(水)の午後6時半―8時に開催。日本政府が、インドネシア政府、タイ政府、国連アジア太平洋経済社会委員会(UNESCAP)、アジア太平洋SCP円卓会議(APRSCP)、PECoP-Asia(環境研究総合推進費戦略研究S-16)、地球環境戦略研究機関(IGES)と共催した会議です。タイトルは、”SCP in Asia and the Pacific for Accelerated Achievement of SDGs”。前日のサイドイベントで冒頭挨拶を述べられた環境省の高橋地球環境審議官がここでは、日本のSCP(Sustainable Consumption and Production)に関連する国家戦略として、第5次環境基本計画、第4次循環基本計画を策定、実施することを通じて、取り組みを進めていることを紹介していました。また、国立環境研究所・主任研究員の田崎智宏さんも参加し、持続可能な消費と生産の取り組みを進めていくうえで、政策担当者が創造力を発揮することの必要を述べておられました。
星野大使は 今年6月5日(火)~6日(水)にニューヨーク国連本部で開催された、「第3回STIフォーラム(the third annual multi-stakeholder forum on science, technology and innovation)」の共同議長を務められた方です。各国政府代表、科学者、イノベーター、テクノロジー専門家、ビジネスリーダー、起業家、市民社会組織代表など、多様なステークホルダーが参加し、持続可能な開発目標(SDGs)の実現を後押しする科学技術やイノベーションの役割を討議する場で、ハイレベル政治フォーラム(HLPF)を前に、毎年2日間の会期で開かれます。政府代表部のレセプションでのスピーチで岡本外務大臣政務官がその重要性を指摘したのがこのSTIフォーラムです。今年が3回目で、参加者数はこれまでを上回り、およそ1,000人に達したそうです。
ハイレベル政治フォーラム(High-level Political Forum = HLPF)とは、一言で申し上げれば、グローバルなレベルで、2030アジェンダとSDGsのレビューとフォローアップを行う場です。HLPFで、世界の国々がSDGsの達成をめざすべく、さまざまなステークホルダーの関与のもとに、進捗状況を報告して経験を共有したり、SDGsを目標ごとにレビューしたりするのです。
ハイレベル政治フォーラム(HLPF)という名称からだけでは、SDGsとの連関を類推することは困難かもしれませんが、その前身は、国連経済社会理事会の機能委員会のひとつ、53か国構成の持続可能開発委員会(CSD)です。それは、1992年の地球サミットをフォローアップすべく、持続可能な開発という新しいコンセプトに関する初の画期的な国連機関として設置されたものでした。主要グループなどの幅広い参加を可能にしたことなど、目に見える成果をあげてきた委員会でしたが、そのうちに持続可能な開発の3側面を代表する人々が幅広く集まるというよりも、環境分野の人々が集う「環境委員会」として認識されるようになってしまったということなども指摘され、20年後の2012年には、CSDに代わって、全加盟国が参加する、より実効的でより高い政治レベルのフォーラムへと格上げして設置されました。その後、2015年には、前述のフォローアップとレビューのため、各国が自国の取り組みについて、グローバルな場で自発的に報告するVoluntary National Reviews =VNRsというしくみをつくるなどして今にいたっています。日本が昨年、自国の取り組みを報告したメカニズムこそ、このVNRsです。
**MGoSとは、Major Groups and other Stakeholdersの頭辞語です。1992年で採択された「Agenda 21」が、社会の9つのセクター(女性、子ども/若者、先住民、NGO、地方自治体、労働者/労働組合、ビジネス/産業、科学技術界、農業従事者)を主要グループとして、持続可能な開発に関連する国連活動への広範な人々の参加の促進を謳いました。現在、その他のステークホルダーが加えられ、MGoSと呼ばれるようになっています。政府間プロセスにおけるMGoSの参加の様態を決めるのは加盟国です。